岩渕先生の部屋ドライマウスとシェーグレン症候群

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シェーグレン症候群の治療

最近、ドライマウスの原因として注目されているのがシェーグレン症候群です。先にお話ししたように栃木医療センターで“唾液が作れなくなった人”と診断した方の中、シェーグレン症候群の方は約50%もいて、この病気が実はとても多いのです。この病気の特徴は口以外にも目、鼻、のど、皮膚などが乾燥することです。目がごろごろしたり乾いたりします。他には「鼻が乾く」、「のどの詰まる様な感じや違和感がある」、「皮膚がカサカサして乾燥肌になった」などの症状がでます。また、関節リウマチなどの膠原(こうげん)病や甲状腺や肝臓などに他の自己免疫疾患を合併することもあります。

この病気かどうかを決定するには検査が必要です。専門の先生のところで検査を受けることをお勧めします。検査の内容についてはこのサイトの他の先生の記事をお読み下さい。

口の中以外の症状については眼科、内科、皮膚科や耳鼻科と相談して治療を行うことになります。先にもお話しましたが残念ながら現在のところ、この病気を元から治すことはできません。ですから、口の中については症状を和らげる治療が中心になります。以前は、うがい薬や人工唾液、トローチなどを使用することが主でした。場合により漢方薬、唾液腺ホルモンなどという飲み薬が使われていましたが、どれもあまり効き目があるとは言えませんでした。約10〜30%ぐらいの方に僅かな効果がみられる程度でした。しかし、朗報があります。セビメリン塩酸塩水和物やピロカルピン塩酸塩という飲み薬はとても効果が高く、私の調査では70%以上の方に効果がみられました。

それ以外の治療としてはマスクをして口の乾燥を予防したり、口の中がネバネバする方には各種うがい薬を使ってもらったりします。舌が痛む場合やザラザラする方には保湿剤を使ってもらいます。

シェーグレン症候群の薬物療法(自験例)

栃木医療センターでセビメリン塩酸塩水和物を使って治療したシェーグレン症候群が原因のドライマウスの方は300名以上に上ります。また、ピロカルピン塩酸塩では約100名に上ります。この方々のお話をします。

両方のお薬共に治療を開始後、徐々に効果が出てきます。私の調査ではセビメリン塩酸塩水和物で治療を開始すると、唾液量や自覚症状は2年間にもわたり徐々に改善していきます。また、ピロカルピン塩酸塩でも2年間にわたり改善効果がみられます。

このような結果からドライマウスはすぐには良くならないようです。ですから私は最低でも1年間内服を続けてもらいます。その時点で内服を続けるか、一時お休みをするか、また他の薬に変えるべきかを考えています。しかし、休薬した多くの方で唾液量が減少してきてしまいます。ですので、副作用などがなければ長期間内服することをお勧めします。

次に薬で気になるのが副作用です。また、あなたの健康状態によってはいずれの薬も飲めない場合があります。狭心症などの心臓の病気を持っている方や喘息、てんかんという病気を持っている方は飲むことが出来ません。詳しくは診察して頂く先生にお尋ね下さい。これらの薬には副作用の特徴があります。まず、副作用は内服開始1か月以内に大部分が現れます。私の調査では、セビメリン塩酸塩水和物で最も多い副作用は吐き気で、次には多汗でした。血液検査で異常がみられた方はほとんどいませんでした。また、セビメリン塩酸塩水和物では5年以上内服し続けても肝臓や腎臓などに異常が出ることはありませんでした。ピロカルピン塩酸塩では多汗が最も多くみられ、次に吐き気と頻尿が同じくらいみられます。

ではもう少し副作用について詳しくお話をします。その前に、これらの薬がなぜ唾液を出すのかということを簡単に説明します。それは唾液を出す神経をこの薬が刺激をするからです。ただし、これらの薬が刺激をするのは唾液を出す神経だけではなく、汗や涙を出す神経や胃や腸、膀胱(ぼうこう)を動かす神経も刺激します。そのため、吐き気や多汗、頻尿が発現してしまいます。

これらの薬による吐き気は、内服を始めた直後に多くみられます。そして内服を始めて1か月以上経過した後に症状が出ることはほとんどありません。また、吐き気がみられても5人中4人は軽い“むかつき”や“胃もたれ”がある程度で、2週〜1か月程度で症状はなくなります。ですから軽い吐き気であれば慣れてくるので問題ありません。吐き気が強い場合には吐き気止めを一緒に飲んでもらいます。どうしても吐き気が止まらない場合は、内服を止めればすぐに症状がなくなりますので心配はご無用です。

多汗と頻尿も大部分が内服を始めた直後から始まり、こちらは長期間におよんで続くようです。これらの副作用では吐き気と異なり、慣れることはないようです。ピロカルピン塩酸塩では「下着を交換するほど汗をかく」と訴えられます。有害な副作用ではありませんが、その対策が必要です。しかし、現在のところでは、多汗を抑える有効な方法はないようです。

最後に注意しなければいけないのは、これらの薬はシェーグレン症候群や放射線治療が原因でドライマウスになった方にしか健康保険の適応がありません。まずはドライマウスの原因を調べてみましょう。もし、シェーグレン症候群や放射線治療が原因であればこの薬はあなたの強い味方になってくれるはずです。

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