篠原先生の部屋ドライマウスの治療

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ドライマウスの診断法

ドライマウスの治療法は、原因療法と対症療法に大別されます。

(1)原因療法
唾液腺に直接的または間接的に作用して唾液分泌を障害している原因疾患を診断し、これを改善または治癒させることによって、唾液分泌量の改善を図ります。

(2)対症療法
以下の場合に行います。
1)唾液腺に器質的障害が起こっている場合
2)原因疾患自体が治療不能な場合
3)唾液腺の障害を根本的に改善できない場合、原因不明な場合

ドライマウスの治療としては、

@原因が判明しているもの:まず原因疾患の治療を行い、すでに起こっている口腔乾燥症状ならびにそれに起因する病変に対しては対症療法を行う。

A原因ははっきりしているが原因疾患の治療が困難:対症療法を行う。

B原因が不明:残存唾液腺の分泌機能亢進のための薬物療法や機能訓練法、起こっている口腔の機能障害に対しての対症療法を行う。

ドライマウスの一般的治療法

(1)口腔ケア
1)カリエス、歯周病の予防
原因となる口腔細菌の増殖を防ぐために、ホームケア(自分で行う歯磨き)、プロフェッショナルケア(歯科で行う口腔ケア)を行います。
2)口腔粘膜ケア
口腔粘膜保湿剤による粘膜保護、舌ブラシやガーゼによる舌苔の除去を行います。
3)唾液分泌抑制因子、粘膜刺激要因の除去
食生活や生活習慣の改善を図ります。禁煙、減酒し、刺激物の摂取を控えます。
4)唾液分泌の促進
耳下腺唾液の分泌促進、周囲筋の機能療法(口輪筋、咀嚼筋)などを行います。
5)デンタルプラーク(歯垢)の除去
歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスを用いて行います。
6)デンチャープラーク(義歯に付着するプラーク)の除去
ブラシと化学洗浄剤を用いて行います。
7)口腔洗浄
クロルヘキシジン、ポピドンヨード、塩化ベンゼトニウムなどによる含嗽、スポンジブラシ、綿棒などによる清拭を行います。

(2)口腔機能のリハビリテーション
1)唾液腺のマッサージ
2)舌体操、口腔体操
3)義歯の使用、義歯の安定化
4)粘膜の保湿(保湿剤による粘膜の保湿)
5)嚥下訓練

唾液腺のマッサージ

(3)対症療法
ドライマウスの対症療法では、唾液分泌を促進する食品に加えて、口腔内の湿潤や感染予防などのために、含嗽剤、軟膏、抗真菌剤、トローチ、人工唾液などを用います。

1)食品
ガム、レモン、梅干などの唾液分泌を促進する食品

2)含嗽剤
アズレン製剤:アズノール、含嗽用ハチアズレン、薬用デンタルリンスA
ポピドンヨード製剤:イソジンガーグル
0.02%塩化ベンゼトニウム:ネオステリングリーン
1% 臭化ドミノフェン:オラドール含嗽液

各含嗽剤の作用と使用方法

アズノール(アズレンスルホン酸ナトリウム)

消炎作用、ヒスタミン遊離抑制作用、上皮形成促進作用
4-6mg (2-3錠)を100mlの水で溶解し、1日数回含嗽

イソジンガーグル(ポピドンヨード)

細菌、真菌、ウイルスに有効で殺菌消毒作用が強い
2-4mlを水約60mlに希釈して1日数回含嗽または清拭

ネオステリングリーン( 0.025%塩化ベンゼトニウム)

消毒、感染予防
50倍希釈にて1日数回含嗽

コンクールF:0.05%グルコン酸クロルヘキシジン

感染予防、口腔内の消毒
1日数回含嗽

含嗽用ハチアズレ: アズレンスルホン酸

消炎作用、上皮形成作用、粘液溶解作用
(2g)を1,000mlの水で溶解し、1日数回含嗽

各含嗽剤の外観

3)軟膏(ステロイド製剤)
デキサルチン、ケナログ、アフタゾロン、サルコート

4)抗真菌剤
ファンギゾンシロップ、フロリードゲル、イトリゾール

口腔カンジダ症の治療薬(抗真菌剤)

5)トローチ

殺菌性トローチ: デンタルケアタブレット(パラチノース+キシリトール)錠
オラドール(臭化ドミフェン)錠
SPトローチ(塩化デカニウム)錠
ダントローチヒビテン(塩化クロルヘキシジン)錠
抗生剤トローチ: アクロマイシントローチ(塩酸テトラサイクリン)錠
テラマイシントローチ(オキシテトラサイクリン)錠
複合トローチ(硫酸フラジオマイシン+塩酸グラミシジン)錠

6)人工唾液
サリベート、シューR、ウエットケア、バイオエクストラアクアマウススプレー、ストッパーズフォー

7)洗口剤
ヒアルロン酸ナトリウムが主剤、絹水、オーラルウエット、ウエットケア、シューR、マウスウオッシュ、CHX洗口液、バイオエクストラアクアマウスリンス、コンクールF

8)口腔用軟膏
アズレンCMCザルベ、テトラサイクリンCMCザルベ、バイオエクストラアクアマウスジェル

口腔内の湿潤剤の外観

(4)薬物療法
唾液分泌量の改善のために、これまでに多くの薬剤(唾液腺ホルモン、去痰剤、植物アルカロイドなど)が用いられてきましたが、特に有効なものはありませんでした。しかし、近年、セビメリン塩酸塩水和物、ピロカルピン塩酸塩などが登場し、唾液分泌量の改善が期待できるようになりました。

また、漢方製剤を用いることもあります。

漢方製剤

白虎加人参湯(効能・効果)喉の渇きとほてり
五苓散(効能・効果)口渇、尿量減少
柴苓湯(効能・効果)急性胃腸炎、食欲不振、喉の渇き
麦門冬湯(効能・効果)咳、気管支炎、気管支ぜんそく
→咽喉の乾燥感があり、激しい咳をする場合に使用
柴胡桂枝乾姜湯(効能・効果)冷え性、神経症、不眠
→体力が低下し、精神神経症状、口渇を伴う場合に使用

(5)人工唾液貯留義歯(モイスチャートレー)
上顎義歯の口蓋部のトレー内にガーゼを入れ、人工唾液、湿潤剤をしみ込ませて装着する人工唾液貯留義歯は、特に夜間の長時間にわたる口腔内の保湿に有効です。

人工唾液貯留義歯
ドライマウスの主な原因別治療法

ドライマウスは原因によって治療法が異なります。主な原因別治療法は以下のとおりです。

(1)薬剤性ドライマウス
既往歴や服用薬剤などに関する問診が重要となります。
原因薬剤が確定したら、薬剤の減量または中止について主治医と相談します。
中止可能な場合は中止、薬剤変更が可能な場合は他の薬剤に変更、薬剤変更が不可能な場合は対症療法を行います。

(2)老人性ドライマウス
高齢者では、生理的変化(唾液腺の退行性変化、唾液分泌量の減少、咀嚼機能の低下)、全身合併症(高血圧、脳血管障害、糖尿病など)、薬剤(降圧剤、抗パーキンソン剤、抗うつ剤など)の副作用、全身抵抗性(外的刺激への抵抗性の減弱、栄養不良、脱水など)、潜在性疾患、うつ傾向など複数の原因によってドライマウスを来たしていることが少なくありません。
そのため、老人性ドライマウスに対しては、全身合併症のコントロール(降圧剤、抗パーキンソン剤などの副作用の改善)、薬物療法(唾液腺ホルモン、去痰剤、利胆剤、漢方製剤など)、対症療法(含嗽剤、人工唾液、保湿剤、人工唾液貯留義歯)を行います。

(3)神経性ドライマウス
マイナートランキライザー(抗不安薬)、睡眠導入剤を用いた精神的ケア、対症療法(口腔ケア、舌ケア、口腔機能のリハビリテーション、ドライマウスの薬物療法、含嗽剤、軟膏)を行います。神経内科、心療内科紹介となることも少なくありません。

(4)放射線障害性ドライマウス
食前の口腔粘膜保湿(絹水、オーラルウエット)、齲蝕や歯周病の予防のための十分な清掃、口腔ケアによる口腔機能改善(オーラルバランス)、口腔機能のリハビリテーション、構音機能の維持、改善のための口腔粘膜の保湿、薬物療法(ピロカルピン塩酸塩)を行います。

(5)糖尿病性ドライマウス
糖尿病の治療として、血糖値のコントロール(専門医紹介、主治医と相談)を行います。加えて、ドライマウスの対症療法として、食前の口腔粘膜保湿(絹水、オーラルウエット)、十分な口腔清掃、唾液腺マッサージなどによる刺激、口腔ケアによる口腔機能改善(オーラルバランス)、口腔機能のリハビリテーション、構音機能の維持、改善のための口腔粘膜の保湿を行います。

(6)脳血管障害性ドライマウス
脳血管障害があると、嚥下障害(誤嚥性肺炎)、構音障害、口腔清掃障害が生じます。
そのため、脳血管障害性ドライマウスに対しては、筋機能療法(歯肉、舌のマッサージ)を行います。また、対症療法として、食前の口腔粘膜保湿(絹水、オーラルウエット)、十分な口腔清掃、唾液腺マッサージなどによる刺激、口腔ケアによる口腔機能改善(オーラルバランス)、口腔機能のリハビリテーション、構音機能の維持、改善のための口腔粘膜の保湿を行います。

(7)シェーグレン症候群によるドライマウス
日常生活指導、一般的口腔ケア(口腔を清潔に保つためのプラークや歯石の除去、不適合義歯の修理調整、修復あるいは補綴物の修理、歯牙の鋭縁の除去)、口腔乾燥そのものに対する薬物療法(セビメリン塩酸塩水和物、ピロカルピン塩酸塩)、口腔乾燥に起因する合併症に対する治療、定期的な経過観察を行います。

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